【記録が変わる】名著『理科系の作文技術』に学ぶ、伝わる介護記録の書き方
毎日の記録作成、お疲れ様です。 「記録を書くのに時間がかかる」「何をどう書けばいいか迷う」「後で読み返しても状況がわからない」……そんな悩みはありませんか?
今日は、文章術のベストセラー『理科系の作文技術』から、私たち福祉のプロフェッショナルが今すぐ使える「記録の鉄則」をご紹介します。
この本が目指しているのは、「読み手に、書き手と同じ意味内容を伝えること」。つまり、誤解を生まない文章術です。
鉄則1: 「事実」と「意見」を厳密に分ける
この本で最も強調されているのが**「事実(Fact)」と「意見(Opinion)」の区別**です。介護現場で「記録がわかりにくい」原因の多くは、ここが混ざっていることにあります。
事実(Fact): 誰が見ても変わらない客観的なこと(数値、発言そのもの、行動)。
意見(Opinion): 書いた人の推測、判断、感想。
【NG例:混ざっている文章】
Aさんは今日、なんだか機嫌が悪そうで、昼食もあまり進まなかった。
これだと、「機嫌が悪い」がスタッフの主観なのか本当なのか、どれくらい食べていないのかが分かりません。
【OK例:分けている文章】
(事実) Aさんは入浴の声かけに対し「うるさい、行かない」と大声で返答されました。昼食の摂取量は3割(主食1割、副食5割)でした。 (意見) 普段と様子が異なり、体調不良や痛みの可能性があります。夕方の検温をお願いします。
このように「事実」を先に書き、その後に「意見(判断)」を書くことで、次のスタッフが正しい判断をできるようになります。
鉄則2: 一文は短く、主語を明確に
文学的な表現は、記録には不要です。一文を長く繋げると、主語と述語の関係がねじれてしまい、誤読の原因になります。
ポイント: 「~が、~ので、~して、~しました」と繋げず、一度「。」で切る。
ポイント: 「誰が」したことなのか、主語を省略しすぎない(特に利用者様とスタッフ、どちらの行動か分かるように)。
鉄則3: 逆ピラミッド型で書く(結論が先)
忙しい業務の中で読む記録は、最初の一行で「何が起きたか」が分かる必要があります。 起承転結ではなく、**「結論(一番重要なこと)→理由・経過」**の順序で書きましょう。
悪い例: 朝、Aさんが食堂に来られて、お茶を飲んでいる時に手が震えていて、コップを落として割れてしまい、怪我はありませんでしたが……(最後まで読まないと結果が分からない)
良い例: 食堂でAさんがコップを破損しましたが、お怪我はありません。お茶を飲まれる際、手指の震えが見られたためコップを取り落とされました。
まとめ: 記録は「手紙」であり「証拠」です
この本には**「読者のことを考えて書く」**という基本精神があります。
福祉における「読者」とは、引き継ぎを受ける同僚であり、主治医であり、時にはご家族や行政の担当者です。 かっこいい文章を書く必要はありません。「事実」を積み上げ、「相手が判断しやすい情報」を提供すること。それが、プロの仕事です。
まずは**「事実と意見を分ける」**。今日からこれだけ意識してみませんか?

